Shizuka Eto
pâtissière


  ・空気に流されて
  ・きっかけになった生徒の言葉
  ・こんな風に楽しそうに仕事ができたらいいな
  ・制服を綺麗に畳む理由

 

衛藤 静香さん
三重県 菰野町
パティシエ

 

空気に流されて

上の段にある製菓理論の本、7番が抜けてるんだよね。
それがすごく気になって、探したけど無いんです。
誰かに貸して無くなっちゃった。
7番の本が一番使うのに。

本棚の上の能登牛乳の瓶は、500円玉貯金に使ってる。
専門学校で金沢に居た時に買ったの。
なんで牛乳瓶か?
かわいいじゃん。
でも、実は牛乳苦手なんだよね。
どうしても瓶が欲しくて、
友達に協力してもらって頑張って飲んだ。
もう一本あるからあげようか?

今はパティシエの修行をしてます。
専門学校を卒業した後、働き始めて、一年経ちました。
同期は高卒とかで入ってるから、20歳前後なんだよね。
年齢差もあって焦りもあるけど、
あんまり焦らないようにしてる。

大学では、栄養学の勉強をしてました。
うーん、大学に進学したのは空気に流された感じ。
大学に進学する人が大半の高校だったから。
進学先を調べる時に、食べ物っぽいとこってことで、
栄養科学科がある大学を調べて、それで進学しました。
その当時からパティシエになりたい思いはあったよ。
けど、大学に行ったからには栄養学の知識を学んで、
それに関連した仕事をして、資金や知識を充足させて、
パティシエは老後にやれればいいかなって思ってた。

 

 

きっかけになった生徒の言葉

大学を出た後は製菓の商社に入ろうかなと思って、
就職活動をしてたら、ちょうど教育実習と、
面接日の日程がかぶっちゃったの。
面接日もズラすことができなかったから、
ああ、縁がないんだなって思って、
進路は教育実習が終わってから考えようと。
それで、教育実習に行ったんです。

その時に受け持った生徒の一人に、
陸上部の女の子がいたんだけど、
昼休みの時、その子に
「私、走るのが好きなんです。
大きくなったら陸上選手になるんですよ。」って、
すごく真っ直ぐなキラキラした目で言われたんだよね。
なんだろう、社会を知っちゃうと、
夢の実現の困難さばかりに目がいっちゃって
そんなことを簡単に言えなくなっちゃったんだよ。
でも、その子のキラキラの目を見て、
ああ、そういうの忘れてたなって。

やっぱり、パティシエになってみようと思って、
金沢に製菓の専門学校があるのは知ってたから、
記念にオープンキャンパスに行ってみました。
その学校には、いろんな有名なシェフが来て、
なかなか会えない人と会えて、
生きた知識を得られるのが良いなって。
それで、ここに行こうと。

タイミングだよね。
就活の面接を受けられなかった時も、
2次募集あるからって、受ける気になってたら、
多分響かなかったんだよね。
どこかでパティシエになりたいって思いがあって、
そのタイミングで、その子の言葉が響いて、
たまたま専門学校の入試もまだやってなかったから。
だから専門学校に行こうと思ったんだよね。

 

 

こんな風に楽しそうに仕事ができたらいいな

パティシエになりたいと思った原体験は明確にあるよ。
小学校5年生の時、たまたまお母さんが、
夏休みに掃除機をかけてる最中に、テレビがついてて、
それがNHKだったの。
今でも覚えてるけど「食彩浪漫」って番組。
パリブレストっていうお菓子をピックアップしてて、
パリブレストを知らなくて、すごいなって思ったのと、
そこに出演してた辻口(博啓)さんが
すっごく生き生きしてたの。
こんな風に楽しそうに仕事ができたらいいなって。

その何日か後に敬老の日があったの。
おばあちゃんに何かしてあげたいって思って、
たまたま本屋に連れて行ってもらったら、
入口の近くにロールケーキの本があって、
ロールケーキを作ろう、と思ったの。
初めて作って、生地を焼いたんだけど、
作ったこと無かったから、生地がパリパリになってね。
ロールケーキというより、
ビスケットとクリームみたいな感じだったんだけど。
それでも、おばあちゃんにありがとうって言われて、
それがきっかけでお菓子作りにはまっていったね。

だから辻口さんの本は買ってた。出るたびに。
ずっと思い続けてた人だったから、
実際に会った時の感動はすごかったよ。
今では、その人が職場に朝礼で来るの、おはようって。

 

 

制服を綺麗に畳む理由

もっといっぱい本あるんだけどね、
実家にも、クローゼットにも段ボールにもある。
ここの棚は、
フランス語っぽい本を並べていい感じにしてる。
あと、下の方に貰った手紙の返事を飾ってる。
職場を離れる人に手紙を書くようにしてるの。
パートさんでも社員さんでも。
そしたら大体返事をくれるんだよ。
手紙を書くのは、好き。
人と喋る時に強がる癖とか、
元気風を演じる時も多々あるから。
でも、手紙だと本当の気持ちを書ける。
だから手紙にする。真実味が出るかなって。

シフトが重ならなくて、
手紙を手渡せない時もあるんだけど、
私がお店に居ない時にロッカーに、
返事の手紙を入れてくれてる時もあるの。
だから、いつロッカーを開けられても良いように、
どれだけ疲れてても、ちゃんと制服を綺麗に畳んでる。
ロッカーを開けられて、
あ、衛藤さん、意外とガサツな人なんだ。
って思われないようにね。

 

Pick up Book

“ロールケーキの青い本”

最初に買ったロールケーキの本を出したいんだけど、
行方不明なんだよ。
実家にあるはずなんだけど。タイトルを覚えてなくて。
ロールケーキの絵があって青い表紙だったんだよね。
小5だから、2003年の、
敬老の日の前だから、8月とか9月号だと思うんだよね。
柳瀬久美子さんの本だったと思うんだけど、、、
表紙は覚えてるんだけどねぇ、
検索しても全然ヒットしないんだよね。

その本は繰り返し読んでたよ。
その本に載ってた、オートミールクッキーと
ロールケーキを作ってた。
面白いもんで、そんなに愛着ある本なのに無くなるし、
思い出せないんだよね。
長年モヤモヤしてるんだよねぇ。